タヒチで考えたこと

エアータヒチヌイ機78便は、先ほど0700にパペエテを発って、約一時間たったところだ。日本まであと10時間30分、1330ごろ成田に着く予定。今回の第16回西研タヒチMGツアーも、なんとか無事に終わった。皆、病気も怪我もなく、そろって飛行機に乗れたことは嬉しい限りだ。

今回、タヒチ本島の送迎は、毎回顔なじみの馬場さん。今回は風邪をこじらせて苦しそうだったが、それでも懸命の観光案内に頭が下がる。

ボラボラは、いつものホテル・ボラボラが工事中のため、インターコンチネンタル・ボラボラ・ルモアナリゾート(元ビーチコマー・モアナビーチリゾート)。89年の第四回に続いて二回目の利用だが、特に知った人はなし。

ランギロア環礁

ランギロアは、前回2006年にお会いした高田雪枝さんがアクティビティーを担当されていた。また、なんと元SPT(サウスパシフックツアーズ)のタヒチ主幹をやっていた千坂芳明さん(51)が、ホテルキアオラのダイブショップ「ブルー・ドルフィン」の仕事をやっておられたのには驚いた!大変な出会いだ。西研ツアーが毎回うまく行くのは、この千坂さんが第一回(1986)から現地で受入れを担当してくれていたからだ。今回のツアーは、妻の佳恵がTIAREさんの影響で今年からダイビングを始めたため、ランギロアのダイビング(8人)が大きなプロジェクトの一つとなった。

初日は、まず総勢18人が、自転車13台と車1台に分乗して島一周をする。

この島一周自転車小旅行に、ホテルキアオラから一頭の黒い犬が、緑色の首輪をはめて、どこまでもどこまでも付いて来るので、みんな不思議に思った。何だろう、この犬は? どうせ途中から適当に引き返して帰るのだろうと思っているのに、途中姿が見えないから帰ったのだろうと思っていると、まだまだメンバーのあれこれに同行して、併走して頑張るのだ。

以前交通事故にでも遭ったのか、体を斜め向きにして走っている。空港も過ぎ、どこまでもどこまでも走ってくるので、こんなに頑張ってきたら、誰かが飲み物か食べ物でもやらないといけないのでは、と心配になり始めた。

アバトール村

自転車は、目的地のアバトール村に着き、パレオ屋の次に、とある雑貨スーパーに到着したとき、皆は店に入るのに、この犬(ポチと呼ばれた)は、店の人から「シッシッ」と制止されると、素直に店に入らない。そのとき、なんと市川愛さんが、この犬に自分の飲み物を飲ませてやった。犬は、口の周りに白い唾液をいっぱい付けていたから、相当疲れていただろう。そのときのこの水の振る舞いはものすごく嬉しかったに違いない。別にワンワンとも言わず、シッポを激しく振るでもなく、このときもおとなしく飲んでいたに過ぎなかったが、、。

交流

そうこうするうちに、皆が波止場に着き、土地の小中学生たちと一緒になって飛び込んだり泳いだりの大交流。そのときも、このワンちゃんはちゃんとそばにいて、佇んでいるのだ。

そのように長時間行動を共にする犬に、皆は感動して、(これは只者ではない、ちゃんと我々と行を共にするという意図を持って、この10キロあまりを走りぬいているのだ)ということに気がついた。
タヒチは年がら年中、東から強い貿易風が吹き付けている。だから帰りは逆風になり、自転車の人は大変だ(我々5人は車に乗っているから楽だが)。板東さん、田中一朗さんなど速い人もいるし、市川愛さんなどはあえぎあえぎ走っている。「早くホテルに着いて、あの愛さんを拾いに引き返そう」ということになり、私たちは一足先にホテルにおろされ、車は引き返していったが、すれ違いに愛さんは自力でホテルに滑り込んで来た。

あとで聞くと、あの犬を拾いに、ホテルの人が車で途中まで行き、保護して連れ帰ったそうだ。

それにしても、あのポチが、なぜ我々に遠いアバトールまで同行してくれたのか、不思議は解けない。

ランギロアの、この上なく上質の自然と、土地の人たちの暖かさと、海底の魚たちの美しさに加えて、この犬の不思議なホスピタリティーぶりには、全員が霊的なものさえ感じたのではないだろうか?

(KK西研究所・所長 西 順一郎)