禁をやぶる

「絶対コンデジ(コンパクト・デジカメ)を守る!」という家憲を破って、ついにこの私も「デジイチ(デジタル一眼レフ)を買ってみるか」と思い始めた。これには、大きな転換点となった本がある。今も私の机の上に置かれている『デジカメに1000万画素はいらない』(たくきよしみつ、講談社現代新書、2008年)という一冊である。

鐸木氏は、もともとカメラマンではなく、若いときはビクターから歌手デビューしたというから、音楽畑の出身。それはどうでもいいが、それよりこの本の、9,16,69ページ等の低画素と高画素の比較写真は、いずれも低画素の方がはるかに発色が自然で豊かである。一方、高画素のほうはいずれも単純、平板で豊かさがない。

なぜこうなったかと言えば、高画素になると一画素あたりの受光面積が狭くなり、ダイナミックレンジが低下するということらしい。このことについては、以前から文月涼氏が厳しく指摘していた。たくき氏の提言はさらに具体的で説得力がある。私は思わず、この人の本を三冊買い求めた。

たくき氏は、したがって、各カメラのCCD、CMOS等センサーのサイズを問題にするのだが、ここではコンデジは子供扱いと言っても良い。

そういうことから、私もそろそろセンサーの大きい一眼レフをと思っているところに、ミラーがなくて超小型軽量の松下のG1が出た。買いたいが、もう一つ大きな高倍率ズームが出てから、と待っているうちに、この三月、GH1という動画入りの新機種が出てしまった。(動画は欲しくない。)

LX3という機械

そうこうしているうちに、松下からもう一つ「LX3」というコンデジが出ているという情報が入った。この機械は、一般のコンデジよりセンサーをほんの少し大きくし、かつ画素数を1000万画素にとどめて、画素あたりの受光面積を確保し、ダイナミックレンジを広げている。2.5倍ズーム、F2.0。

たくき氏によれば、「LX3を触ってみた感じでは、ああ、これは当分の間、コンパクトデジカメのダントツお勧め第一位の座は揺るがないな、という印象です」という。これは大きい。いつも参考にしている「価格コム」の中の有名人「Jかめ」さんもこれを買ったそうだ。

ベテランも買うのなら、と疑わずそれを買って、2/21-22、三浦半島のMGF会場に持っていった。「これで俺も、たくきさんのようなDレンジの広い写真が撮れるか」と勇んで撮ってみたのだが、いざMGFが終わって事務所でインデックスを焼き、かつ一枚ずつ焼いてみると、最初の数枚が、私の大嫌いな緑色なのだ。

緑色の思い出

これはもう、二十数年まえの話になる。ところはパラオ。水戸の高田氏がパラオMGに参加していた。わたしはたしかミノルタのコンパクトカメラを当時使っていた。高田さんの写真を見せてもらうとどれも色がいい。私のは同じ場面を撮っても、黄色っぽい。
「高田さんのカメラは何ですか?」
「キャノンのオートボーイですよ。」
それから私はキャノンファンになり、何世代かにわたり、オートボーイを買い続けた。

1990年代、デジカメの時代が来た。タヒチに行くとき、中島マヒマヒ氏から、「カシオのQV-10でタヒチを撮ってきてくれ」と言われ、持っていったが、このときは、撮る気にならなかった。

それから数年たち、カシオからEXILIMという薄型デジカメが出た。うちの家内は、薄型信仰主義者なので、これを買って、北海道江別の某大学・K教授のところへ行ったとき、会議室で、数人の集合写真を撮った。緑色だった。壁が緑っぽい! いっぺんに私はそのカメラがいやになって、売り払ってしまった。(そういえば、松下の10倍望遠も緑色だったな・・・)

X3出る

松下のLX3が緑色なので気に入らない。これはもう、カメラの画像エンジンの問題なのかもしれない。つまり、キャノンの色は好きだが、と言うことは、やはりDIGIC3、DIGIC4にしないと駄目か?

G1、GH1を買っても、また緑色が出たら嫌だ。キャノンでそんな思いをしたことはない。となると、やはり一年前に出た、あのEOS KISS X2にすべきなのか? こんなとき何かとよりどころになるのが奥飛騨さん。さっそく遠距離電話をかけてみると、「いや、X2はすでにキャッシュバック中だということは、在庫処分中なのだから、新型が出るのも遠くないということですよ。X2の新型を待った方が良いのでは?」とのご託宣。

彼のその電話があってから、意外に早くX3の発表があり、発売もなんと四月下旬ということになった。

一年前三月にX2が出たとき、(ああ、俺のマシンが出た)という気がしたのだが、こうしてようやくこの反逆児の僕も、人並みにデジイチの一員になる仕儀になってしまったか。

例によって、私はものの「重量」を特に重視するので、X3でもレンズは軽いものを選ぶことになるだろう。但し、たくき氏や、清水哲朗さんのタムロンの18-270ミリ高倍率ズームと、単焦点F2の二本は買うことになるのだろう。

(KK西研究所・所長 西 順一郎)