微積の本を探す

日ごろ、物理や天文学の入門書を読みあさるのが好きである。このところニュートンとかアインシュタインの伝記やマンガを読んだせいか、なぜか微積の本が読みたくなって、本屋に「大村平」の「微積のはなし」を探しに行った。

で、確かにその本はあるにはあったのだが、よく見たら、そのそばに「世界で一番分かりやすい、社会人の微分・積分」という本がある。表紙が素晴らしい。
立ち読みした限りでは、この本がぴったりのようだったので、とりあえず買ってきて読み始めたが、あと30ページを残したところで、いまいち「世界で一番分かりやすい」とは行かなくなった。

もっと良い本があるのではないか? そう思って、また本屋に行ってみると、日ごろは「図解雑学シリーズ」なんて眼もくれない中に、一冊、今野紀雄監修「わかる微分・積分」(ナツメ社、1200円、1999年)というのがあって、これの本作りが、かつて私が昭和53年にソーテック社から出した「人事屋が書いた経理の本」にそっくりだ。

私の好みは、見開き「左が図解、右が説明」なのだが、同社の本は、左右が逆なだけで、作り方のコンセプトは全く同じ。

これを一読して、「これぞ分かりやすい説明!」なのに驚いた。余計な比喩はない。下手なジョークもない。まさに痒いところに手が届く書き方で、今野さんたちの頭のよさが伺われた。

図解雑学ってすごい

ほう、「図解雑学」って、いけるんだ。私は、このシリーズで「戦略会計の○△」を出せたらいいな、と強烈に思うようになった。

すっかり図解雑学ファンになった私は、同じシリーズで「図解雑学・マンガで分かる微分・積分」を買ってきたが、この本は感心しなかった。何でもマンガにすれば易しくなるというものではないのだ。

「マンガ」という表現形態はとても良いと思う。簡明だし、具体的だし、本質を直截に取り上げていく。最近読んだのでは、犬上博史の「コミック・ニュートン」(丸善、1250円)が良かった。ニュートンの一生なり全貌なりが要領よく1~2時間の中に凝縮されていて、しかもラストには年表付き、関係図書付きの本格派である。

過去に、マンガで良かったのは、新里堅進氏の「沖縄決戦」(ほるぷ出版、800円、1985年)。とても文章では表わせないリアルさが見事に地元漫画家の手によって表現され、沖縄戦の悲惨さが大迫力で迫ってくる。

盆帰り

さて、毎年八月は恒例盆帰りである。佐世保を通るときに、吉原マイタイさんに、最近発見したという佐世保駅前の蕎麦屋に連れて行ってもらった。駅前を北へわずか150m、大通りに面したマサカというところに、蕎麦屋らしくないモダン蕎麦屋がある。味よし、店よし、人もよし。

この蕎麦屋が昼12時からしかやらないと言うので、時間つぶしにすぐ近くの新商業施設3階の金明堂書店に行く。ふと見ると、なんと、岡部恒治著「マンガ微積分入門」(ブルーバックス、1994年、980円)があるではないか! なかなか古い本は手に入らないというのに。

この岡部氏も、先ほどの今野氏と同じように東大数学科卒、現在埼玉大学教授。
このマンガはけっこう硬派で、駄洒落も決して品を下げていないし、説明のしかたも適当にハイブロウなのだ。今野さんに似ているが、丁寧さは今野流「見開き紙芝居」のほうが上である。

結論

マンガで描けば分かりやすくなると言うものではない。分かりやすいかどうかは、著者の頭脳の明快さ・明晰さによる。(ガモフの「1・2・3・・・無限大」などの例)

上にも書いたように、いつの日か、「図解雑学」で「戦略会計の○△」か何か
を、利益感度中心に一冊書いてみたいものだ。久しぶりに、、。

(KK西研究所・所長 西 順一郎)