久しぶりの大学講義

 6/29(木)1500~1630まで、埼玉県草加市の独協大学の大久保ゼミ(経営学、45人)で講義をさせてもらうというラッキーチャンスがあった。

以前、早大の機械工学科で学生・院生を相手にマトリックス会計の講義をしたことがあるが、大学での講義のチャンスはめったにあるものではないので、今回も張り切って準備をした。

そもそものきっかけは、東大新聞研究所時代の同級生会をやることになり、集まったところ、発起人の大久保貞義氏(71)が、仲間の元電通・M君を講師に呼ぶという。そういうチャンスがあるのなら、ぜひ私にも一回やらせてほしいと希望したところ、今回の運びとなったわけだ。

さて、日時と90分間ということは決まったものの、大学生を相手に何を話したらいいものか?

最初は得意の「V型人間」の話でも、と思ったが、話のうまさではM君らの肥満型・筋骨型に敵いそうもない。私が絶対負けない自信があるのは、話すより黙ってやってもらう、MG式・実習式・演習式の共同研究であり、時間90分という枠からすると、「利益感度分析」が手ごろだろう。

早稲田では、テーマが「マトリックス会計の解説」ということだったので、MGの第1期の資金繰り表、右左会計、最後にマトリックス会計を皆で協力し合いながら作ってもらったが、これには「鉛筆・消しゴム・電卓」の三種の神器が必要だ。しかし今回は経営学のゼミ生45人。電卓を持ってこない学生もいるだろう。「利益感度分析」ならば、数字が簡単なので、誰でも暗算で出来る。

西式は共同研究(教えあい)にしたほうが効果的である。机の配置を六人グループ制にし、かつ素人ばかりなので、当日は金子さんにも助手として同道してもらうことにした。紙は、第四表STRAC表一種類を用意すればよい。

いざ、大学へ!

さて当日、早めに事務所を出て、秋葉原から日比谷線に乗りかえ、松原団地に向かった。意外に時間がかかり、大学が駅まえ歩いて5分のところにあったので助かったが、約束の「30分前」ギリギリに到着した。

教室に出ると、一人の男子学生が室内で帽子をかぶっているのが気に入らない。
私は一瞬いろいろ考えたが、ツツーっとそばへ寄って、耳元でささやき戦術。「帽子を取りなさい」。その子は、思ったより素直に、すぐ取ってくれた。

40人中、半分が女子学生。皆なかなかきれいだ。九州の某氏なら、目移りがしてさぞ困ることだろう。私は内気なので、女の子の顔は直視できないたちだから大丈夫だ。

利益感度分析の講義録


(1)会計には二種類ある
(2)DCとFC
(3)DCの歴史とアメリカ大恐慌
(4)CVP分析
(5)損益分岐点分析の公式とそのグラフ
(6)PVQFGの導入
(7)企業方程式の発見
(8)損益分岐点は断崖である
(9)損益分岐点には4種類ある

私は話が飛ぶし、結局伝えたかった結論は何だったのか、途中で忘れてしまうこともしばしばだ。その点、野口悠紀雄氏の講演は、簡明な3分法によるレジュメを使って、時間的にもぴったり収める。

そこで、野口氏の真似をして、珍しく私もあらかじめ上記のような全体の構成図を作った。で、極力、話が行方不明にならないように進めたつもりだが、なにしろいつものMGマンたちと違って、相手が何も知らない学生たちなもので、必ずしも面白くは進まなかった。これが社会人相手だったら、もう少し浪花節調でユーモラスにやれるところだ。

反省会で

ともかく講演は、なんとか無事に済んだ。講義室には、学生約40名のほか、大久保教授・村山洋一氏・萩原氏の三人が傍聴されていた。

講義直後の反省交流会兼打ち上げ会には、いつもの倍という14名もの男女学生が参加してくれた。そこで、いつものMGのように「今日は一日、、」を感想文代わりにやってもらったところ、皆予想以上に良いことを言った。三人の女子学生は特に熱心で、「今日の講義をぜひ自分の実家の経営に使いたい」などと言っていた。

また、元野村総研の村山氏は、「今日の西君の講義は氷山の一角だ。底辺には、膨大な研究とウンチクが隠されている。その膨大な研究と創造を、透徹した頭脳で統合し、かつ実用化している」と最大級の褒め言葉で批評してくれた。感激の極みだ。

損益分岐点分析は、経営の中枢に位置づけてもいいと思うので、経営学科では当然教えてしかるべきと思う。講義の途中、学生に確かめてみると、大学ではまだ習わないと言っていた。(一橋大学の教科書『管理会計』中央経済社2003には、CVP分析として一章設けられている。)

千葉市にある東京情報大学(中尾宏教授)では、かなり力を入れて繰り返し学生たちにMGを教えているという。昨年は、そこの女性講師の先生が、東京MGに体験に来られた。

昨今はアメリカ渡来のMBAばかりが流行しているだが、口先・頭だけでなく、身体に基本的能力を叩き込んだ実力型のビジネスマンがもっといてもいいとつくづく思う。

(KK西研究所・所長 西 順一郎)