行くぞ九州、ナビ旅行

毎年夏の九州帰省は、熊本空港着陸から始まる。もう十年ぐらい使っている日本レンタカーでフィット(ナビ付き)を借り、空港から阿蘇外輪のミルクロードへ向かう。ただ黙って助手席に座っているよりも、分かっていてもナビに道案内させたほうが面白いので、スタート前に、黒川温泉の宿の電話番号を入力する。

最近のナビはずいぶん進歩した。最初の頃は、S電機のゴリラで、これが頭が悪くて、電話番号入力でさえが、間違うとまた最初からやり直しで、「どうしてナビには、マイツールのようにドンとESC(エスケープ)が右と左に付いていないのか?」と、頭にきたものだ。

ナビも、年を追って普及し、もはや付いているのが当たり前。その入力も、相当楽になってきた。今年は、ちょっとまごついた程度だ。番号の入力そのものは、非常に常識的。「セット完了」とか「案内開始」とかいちいち言わないといけないのが、なにか余分な気がする。

縮尺と方向の変更

走っていきながら、「広域」と「詳細」で縮尺を変えるわけだが、これはとても便利だ。だいたい400mを一目盛り(約1cm)に設定するのが標準かと思うが、状況によってもっと大縮尺にして細かい曲がり角・交差点に備えたり、逆にマクロに見たいときには、1cm何キロとか思い切り小縮尺にして全体を俯瞰したりする。

方向の設定も大事だ。車の進行方向を上にすると、いろは坂やヘアピン・カーブあたりでは、めまぐるしくてわずらわしい。そういう時は、北を上に定位置にセットすれば、落ち着いて判断できる。ところが、場所によっては北を定位置にするよりも、前方を上にしたほうがよく分かるときもある。このあたりはさすがに良く出来ている。

経路選択

まず第一日。熊本空港から黒川温泉へは、ナビの指示も、当方のいつもの計画と大差ない。問題は二日目だった。黒川温泉から熊本港までの長い道のりをどう行くか?

A案は、往路を忠実に逆行して、天下一品の景色・風光を楽しみながら空港へ戻り、そのまま熊本港に向かう案。B案は、初めこそ同じだが、途中の分かれ道から菊池渓谷へ下って、熊本市に出る案。どっちにするか、だいぶ迷った。ナビは何と言うだろう??

現実には、出発の朝になってみると、彼女が「黒川温泉の土産物屋に寄ってみたい」と突如言い出し、この一言で、AB案ともお流れになった。

車は西へ。彼女が孫のみやげ物などをあさっている間に再設定すると、車はさらに西の南小国町へ行って、役場を左折、一路南下して、大観峰近くの峠に取り付き、そこで右折して、あとはミルクロードの往路を逆に戻るC案だ。これは考えなかった。そのルート(国道212号=日田往還)を行くと、バイクや車も少ない快適なドライブウェーだった。

その先はナビにしたがって(菊池渓谷には入らず)真っ正直に大津町に出て、そのまま熊本市へ。熊本東バイパスは渋滞がひどかったが、なんとか乗り切って、西方船着き場へ。一便早い1320のフェリーにスレスレで間に合った。

一度だけあわてたのは、熊本港からフェリーに乗って1時間、目指す島原港に入港し、下船前、サイドブレーキ中に雲仙の旅館の電話番号を入力したときだった。なんと画面は、依然として先ほどの熊本港にいるままとなり、熊本港から陸路で雲仙に大カーブで繋がった。「おかしい、もう駄目か」と思いながら、あきらめて数百メートル道を走ったところで、突然正常な表示に回復、一安心。

4年前(2004年8月)に来たときは、火砕流のあとをじっくりと見学したが、今回は緑が増えた現場を横目で見ながら、一路雲仙へ。それでも、道端に、「元○○小学校跡」「新○○小学校→」などと表示があって、当時の大変さが窺がわれた。

予定通りの到着

ナビでもう一つ感心するのが、「到着予定の表示」である。「この分で行くと、目的地への到着は何時何分ごろですよ、あと何分ですよ」というのが良い。
今回も、長崎駅前営業所に返車するのが正午12時の予定に対し、到着表示はずっと1125ごろを示していた。余裕だ。

しかし、雲仙から長崎に入る入り方には最近では数コースもある。どれを選ぶか、お好みしだいだが、選び方によっては到着時間も当然変わってくるだろう。
この日、運転担当者の気持ちは、長崎のグラバー邸近くの出口から市内に入ろうというものだった。

いずれにせよ三日間の運転は、事故もさほどの渋滞もなく、順調に行った。ナビの「ガソリンスタンド表示」のおかげで、ラストの満タン作業もスムーズに終わり、車は終点の長崎駅前営業所にピタリ、予定時間どおりに滑り込んだ。

なお、問題のガソリンの価格は、途中176円というところもあったにもかかわらず、長崎市内は日本一高いということで、190円を取られてしまった。そこまではナビは教えてくれなかった。

もう一つ。東京出発前にあわてて買った九州の『ツーリング・マップル』(昭文社)を現地では一度も使わなかった。使わなくてもいいぐらいにナビの完成度が上がってきたということなのかもしれない。

(KK西研究所・所長 西 順一郎)