このほどようやく『人事屋が書いたキャッシュフローの本』をソーテック社から出版にこぎ着けることができた。(1500円)

二年がかりの本だった。
CFの研究を本格的に始めたのが98年9月。けっこう悪戦苦闘の連続だったが、最終的には、これまでにない良いところに行き着くことが出来た。
したがって、この本もまあまあである。開発はその後も続き、出版後にまた良い図表が出来たが、これは「MG」に取り付けて、さらに休まずに改良を続けて行きたい。

 さて、その『人事屋CF』の第6章に、秋田県・中央市場専務の千葉均さん(52)の「スーパーの後に来るもの」という論文が載っている。
そこで、私は、10/17-18の盛岡MG出張を少し早立ちして、前日夕刻、盛岡の次の駅「大曲駅」まで乗り越して、中央市場の最新鋭「大曲店」(99年10月オープン)の、見学に行った。
同行したのは、東京から西、梅原、菊池の三人。地元東北から、金沢、佐藤英
悦、佐々木高志の三人、計六人。
駅では、千葉夫妻の出迎えを受けた。

店は、大曲駅から、R105を東北へ約3キロ。思っていたよりずっと大きい駐車場、広くて明るい清潔なしゃれた店内にびっくりした。
例によって、入って左手に「戦略室」がある。その隣が事務室。これは、一つ前の秋田店のときと同じレイアウト。ただ売り場面積が500坪。

佐藤伴茂店長の案内で、一わたり店内見学。一緒に回る梅原・菊池組は養鶏・牛乳方面のお仕事なので、店内でも、その個所に来るとなかなか動かない。
一般に、牛乳・卵は「おとり商品」に使われるため、その低Pぶりにお二人は
深刻な顔である。

店内見学が終わると、「戦略室」で、いつもの粗利ミックス表、実績ミックス表の擬似プレゼンテーションをしてくれることになった。
大きな旧式のプロジェクターがあり、壁面に映し出されたのはレジのサーバーからSGETで取り出されたその日の売上。早くも、沢田方式で、時間別にQが分けられているところが凄い。

私が「良いな」と思ったのは、
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商品名 商品コード   P V M Q PQ VQ MQ m%
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と小見出しがきれいに、戦略会計STRACの順番を崩さずに並んでいることだった。基本に忠実に、変に順番を変えない、省略しないということが、「科学経営」には重要だ。

佐藤店長がマシンを操作し、千葉専務が「SETPして」とか、「右を出して」とか、マイツール用語で、ばんばん指示する。
STRACが普通に使われている点も素晴らしいし、またマイツールががんがん使われている点が最高だ。(^_^)\

 結論へ行こう。
千葉均の経営の凄いところは、戦略経営・科学経営・全員経営をすべて実現・
実行していることである。
しかも、常に教育・向上・前進を怠らない。赤チップ・青チップ・黄チップ・緑チップが全部ある!  無いものが無い。
千葉均に近いイメージを探すと、やはり諸葛コウメイそのものではないか?

この店からさらに東北方向へ7キロ離れたところに、この店の10倍の大きさのJスコ中仙店(2F建て、5000坪)があるが、食品部門だけを比べるとJ店が700坪、当店が500坪ということである。
もちろん、Pにおいて負けることはないし、かつQでも頑張っているので、PQはもちろん、MQでも敵を圧倒している。

 一般にスーパー業界は、商業はどこでもそうだが、今でもPQ中心主義である。
一日のPQを把握し、現金収入と突き合わせをするのがやっとであるところが殆どである。
その中で、この中央市場・食品館だけは「MQ管理」をしている。
それも、日次MQ管理である。
この日次MQ管理は大変らしい。
なぜなら、
「前繰り在庫+当日入荷-次繰り在庫=当日売上」
において、次繰り在庫が分からないことには[当日VQ]が分からず、したがって[当日MQ]が掴めないからだ。
在庫管理、棚卸しはとても大変。特に、1万点とか、10万点とかアイテムがあるスーパー業界では至難の業。(アメリカでは、棚卸し専門業者が、代行を請け負っているという。)
千葉さんのところでは、水曜日と土日に攻勢をかけており、MQミックス表作成検討会議も、週2回行なっている。(慣れると、一回30分)
そのうち1回は実地棚卸しに基づいていて、もう1回は「推定棚卸し」に基づくという。
数か月に一回しか棚卸しをしない商業界において、ほぼ日次棚卸しにより「MQ」まで把握して、必要MQ、必要m%を単品ベースで計算し、低P戦略、ハイP戦略を自由自在に駆使している会社は、まず他に無い。なぜなら、マイツールが無いからである。
特に、昔のマイツールと違って、今のWINマイツールは、何万点ものPOS情報を簡単にソートサーチオートできるようになった。これを活用しているのである。

 いま中央市場では、盛岡ベル開発の「元気の出るシステム」(沢田システム・パソコン版)の導入に取り組み始めた。
さらに、60人の従業員のタイムカードも、マイツール各自入力(ダイレクトイン)である。
これにより、各部門別人時生産性がバチバチ算出出来るという。
MG/MTを経営にフル活用する中央市場・大曲店。

いままたアメリカから、フランスからGMSの次なるスーパーセンター方式が日本にも入ってきており、デパートどころか、スーパーマーケットでさえが危なくなる時代が来ている。
その中で、生き残るためには、戦略発想はもちろんだが、ビジネスのインフラであるMG/MT/STRAC/MXの活用があるのと無いとでは、大差が開く。
今のIT騒ぎは、ひところのMIS、SISではないが、基本・基礎・基盤が抜けている。金沢・千葉均グループの健闘を祈ろう!

(KK西研究所・所長 西 順一郎)