GAAP

 会計学の用語に「GAAP」(Generally Accepted Accouting Principles)というのがあって、「一般に公正妥当と認められた会計原則」と訳されている。(安生浩太郎監修『英文会計入門』実業の日本社、2000年)
たとえば、現金主義よりも発生主義のほうがGAAPに合っているとされる。

私は、かつて昭和50年前後にMGを創るときに、そのGAAPをもじって、「一般に正しいと認められる経営の原理原則」をゲーム化・体系化できないものかと考えた。
Generally Accepted Management Principles=GAMPである。

かつてニュートンは、1687年に『プリンキピア』(自然哲学の数学的原理)という本を書き、万有引力の法則に基づいて天体の諸現象を説明した。宇宙はどうなっているかということを整理統合的に示した。

それほど大仰なことは言わないにしても、景気のサザナミや世の中の一喜一憂に関係なく、万世一系(?)に通用する経営の一般原理が示せないものか? それが、私がMGを創るときに考えた根本的なニーズであった。

私は、それをソニー・ホンダの経営哲学に求めた。一生懸命やる、刻苦勉励する、まじめにこつこつやる、黙って頑張る、ハードに長時間頑張る、努力するというのでなく、もっと物理学的、自然科学的な経営のシステム思考を求めた。それがMGになった。戦略会計STRAC(別名MQ会計)は、その中の経理計数部分を、できるだけ「数学化」したものである。

科学とは数学である

19世紀ドイツの数学者ガウスは、「ある学問が本当の意味での学問であるかどうかを知るためには、その中に数学がどの程度使われているかを見るのがもっとも早道だ」といったそうである。(P.フランクル『数学の愛し方』NHK)

そういった意味で、MGやSTRACなどは、決して最高のテキストとまでは言わないまでも、ある程度、すなわち7割ぐらいの出来で、そういったGAMPを表現できたのではないかと思う。

昔から経営という分野は、あまり勉強されずに、他の分野の専門家がどんどん年を取ると同時に、管理職として上級になり、ある日突然役員になり、経営に直面するという順で来た。これでは駄目だ。

経営は、経営者になってはじめて分かる、各分野・各職能とはまったく異質のものである。まず、それはトータルである。目的は業績アップ、Gアップであり、その達成のためには、専門とは無関係に、目的適合性のあることは何でも手早くやらなければならない。

全体観・戦略眼の涵養

ここ1~2ヶ月、いまさらのように「MGとは何か?」を一口で説明するために、その本質を考え続けてきたが、やはりそれは、全体観と戦略眼の涵養に尽きるのではないだろうか。それを養成できるのが実際の経営体験か、あるいはその模擬体験であるMGのはずだ。逆にそれでなければ、そういったものの養成は難しい。

私にとってまずラッキーだったのは、MGの前に「プレイボス」というドイツ版の経営おもちゃがあったことである。そこから自然に「一人経営」という形になった。

一人経営だからこそ、会社とはどういうものか、経営とはどういうことかがよく分かる。会社をうまくやるには、会社の全体像が見えていなければならない。

マトリックス会計なら、全体がどうなっているかがよく見える。悪いところ、問題のあるところを意識し、それを修正できる。マトリックス会計は、企業を上空から見下ろす地図のようなものだ。

戦略眼・手の打ち方

次に「戦略眼」である。これは、目的意識と優先順位と言ってもいい。良くなるために何をやるのか? どこに手をつければ、全体が良くなるのか? それを発見するのが戦略眼である。

STRACは、全体の中でも、営業の一つ一つを事実ベースでつかみ、何が重要か、何が当社のMQアップに貢献しているかをつかみ、MQソート、プロダクトミックス、ビジネスミックスの手が打てる。

かつて孫正義氏が「自分はビジネスの選択をキャッシュフローで考える」と言っていたが、それはMQで考えることであり、かつ投資と回収で考えることだろう。

また昭和60年ごろ、横須賀の宮川恵氏は「MGは、先を見る目・全体を見る目・足元を見る目を養う」と言ったが、先を見る、全体を見るはともかく、「足元を見る」とは、マイツールのようなデータベース言語を使って、会社の中の現実を動かしていくことである。昨今のように、表計算ソフトの氾濫でタテヨコ集計ばかりを繰り返しているのでは、労力の浪費以外に何物も生まれて来ない。

小林茂は、「事実ベース」(facts-base)という言葉が好きだった。その真理は今も変わらない。世の中をファクツ・ベースで把握して、足元から効率を改善していくには、マイツールとSTRACしかないのだ。

これは、秋田・中央市場の千葉均が「MIX表」で日々やっていることであり、盛岡・ベル開発の澤田司が「元気の出るシステム」で実行していることなのだ。

(KK西研究所・所長 西 順一郎)