中央市場見学会

 4/29~30、GWの取っ掛かりに、今をときめく秋田・(有)中央市場企業見学会が、横手市のホールサムイン横手で、43名参加のもとに行なわれた。

企業見学会は、数年にいっぺん西研で行なっているが、「何のためにMG/MT/全員経営をやるのか」ということが、企業を見ることによって、答を先に見ることが出来るのである。

『見ズバ知ラジ、知ラバ見エジ』とは、道元か誰かの言葉だろうか、小林茂から教わった言葉であるが、確かに、見るのが一番早い。「百聞は一見にしかず」とことわざにも言うとおりである。

今回も、北海道から広島まで、43人の方々が集まって、29日の昼から翌日の昼まで、現地見学→MIX会議見学→一泊交流会→翌日の講義・講演と盛りだくさんで続いた。私も最後のまとめの講義を担当しているし、またこの「マイコラム」に取り上げようと思っていたので、どういう風にまとめようかと、そればかり意識していた。

夜の交流会で

まず初日はビッグフレック横手店のMIX会議見学が1400~1600まで行なわれ、その後は、昨年11月立ち上げたばかりという湯沢新店を1700~1730自由見学、その後1830~2130まで、ホールサムイン大広間で夕食兼交流会。そこで、恒例の「今日は一日どうでしたか?」が行なわれた。簡単な、「口で言う感想文」のようなものである。

このときびっくりしたのは、集団で参加された某社のメンバーたちが、口々に「今日の店舗見学会は、、」と言われたことである。なるほど、スーパー業界では「店舗」見学会と言うのか、と思ったが、しかしどこかおかしい。「店舗見学会」と「企業見学会」とはかなり違うと思う。

「店舗見学会」と言った場合には、まさに売る現場を取り上げて視察している。これに対し「企業見学会」というのは、そのような局部や単機能を取り上げて対象とするのでなく、企業全体・会社全体を対象とする。

それは、MGがセールスゲームではなく、ストアゲームでもないのと同じだ。MGは企業全体の動き(totality)を追究するゲームであり、販売管理はその中の一部に過ぎない。

「○○管理」は駄目

かつて、昭和43~44年に中小企業診断士を受験したころ、勉強した通信教育の教材は、財務管理・生産管理・販売管理・人事管理・倉庫管理等々、「○○管理」と称するもので埋め尽くされていた。その後昭和50~51にかけて私が創ったMGは、そのような何々管理の塊り・集積ではなくて、企業というものは、一匹のナマコのように生きた一個の有機体であって、尻を針で突っつくと、やや時間差をもって頭のほうに刺激がピクっと伝わるものだということだった。

しかも、売る・買う・作る・採用するその他その他、決算に至るまで全てのことをトータルにただ一人でこなす。これにより、会社というものは、決してナントカ管理、カントカ管理の寄せ集めではなく、分かちがたく人体のように融合しているものだということを分からせたかった。

医学でも、他の科学でも全てそうだが、いまや世の中はどんどん細分化され、専門化して行っている。外科・形成外科・整形外科の区別は、我々外部のものにはなかなか分からない。

好評だったMIX会議見学

さて、本論に戻ると、今回の中央市場のMIX会議においても、参加している店長・各売り場長そして千葉専務が、揃って自然体で、まったく固苦しさがなく、のびのびと、各人だいたい社歴2年ぐらいというのに、自由自在にマイツールを駆使し、高度なプロダクトミックスをすらすらとこともなげにやっているのに見学者は皆度肝を抜かれ、また感動した。

 

この高度な教育と、民主的なマネジメントはどこから来たのだろう?

手法より思想

私は、初日の夜の交流会で、かなりの方が、見た目、形、手法、ハウツーのほうに感応しているのを見て、これはいかんと思った。形だけ真似しても、成功はまずおぼつかない。中央市場の成功を、ハウツー(仕組み、仕掛け)ととらえてはいけない。仕組み・仕掛けはもちろん必要だが、その基盤にある二人の経営者の思想があのように入社間もない人たちでも、のびのびと持てる力をフル発揮させているのである。

そう痛感したので、二日目の社長・専務の講演講義の後、私がまとめをするときに「手法じゃないよ、思想だよ」という話をした。

帰りの汽車の中で

西式では、MGの後でも、マイツール、OA大会、シニアコースその他、何をやっても、最後は必ず感想文の時間が設けてある。今回も、ラストの15分は感想文だった。で、その感想文を40人分持って、大曲1331発の東京行きに乗った。座席に座ると早速皆さんの感想文を広げて、片端から読み始めた。そして「しまった」と思った。

私のまとめの講義は失敗していた。「手法じゃない、思想」とまでは確かに言ったのだが、実はどんな思想なのかを語っていなかったのである。

それを今ここで、補完させてもらうことにしよう。「思想」とはこの場合、一人一人を大事にし、尊重し、燃えさせる、小林茂の『ソニーは人を生かす』の思想なのである。

昭和36年~44年までソニー厚木工場長をやった小林茂は、「人を生かす」ということ、ヒューマン・マネジメントについての凄い天才であった。それは井深大の思想とぴったりマッチしていた。

ソニーの設立趣意書

井深大は、昭和21年5月の「設立趣意書」に、「徒ラニ規模ノ大ヲ追ハズ」「真面目ナル技術者ノ技能ヲ最高度ニ発揮セシムベキ、自由闊達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設」と書いた。
こんな会社があるだろうか。普通の会社は、利益を上げるために経営するのである。もちろん、特定の使命を達成するために会社を経営する場合も少なくないが、、。

人間は弱い存在

小林茂は、人間は弱いものだ、ということを根底に置いていた。人間は確かに弱いけれども、持って行きようによっては、びっくりするほど大きなことも達成できる。

人間は、自らプランし、自らDOし、自らSEEするのでなければならない。PLANとSEEだけは上がやり、体を使う仕事DOだけは下がやるというのは間違っている。

人間は弱い存在だからこそ、励ましが必要であり、助け合いのために「チームワーク」が大事である。ワンマンではなく、ペアシステムが必要である。

X理論とY理論

世の中の「人間に対する見方」には二種類ある。X理論とY理論である(D.マグレガー)。X理論とは、普通の世の中一般の見方で、人を信じず、自分を信じる見方である。

先日、NHKで宮崎駿監督の一連のアニメのプロデューサーをやっている鈴木敏夫氏のインタビューをやっていたが、その中で鈴木さんが「自分を信じない、他人を信じる」と言っていたのが非常に印象的だった。「人を信じる」、まさに小林茂である。

あるとき小林さんは、「人は信じる、しかし人間は信じない」(表現は逆だったかも知れない)というようなことを言った。

これは、人間は根本的には信じていろいろやってもらうのであるが、しかし人間は弱い、だからたまには出来心というものもある。だから100%人間は信じるのだけれども、しかしそういう出来心とか、人間の弱さということをよく理解したうえで、対策・システム・マネジメントというものを考えねばならないというようなことである。

人を信じるからといって、無防備になるのは、人間の弱さを知らない無知ということになる。

結論

そろそろ結論に入ろう。私は、秋田の講義のまとめで「思想」とまでは言ったが、「どんな思想か」を言うのを忘れた。そのため多くの人に、僕の真意は伝わらなかった。そこであらためてこの場を借りて、「実は小林茂の思想だった」と述べたかったわけである。

小林茂の思想は、深くて広いから少ない時間では非常に述べにくいのであるが、幸いこの二月、MGフェスティバルを契機に、彼の20年前の講演を復刻したので、(『Y理論の原点』西研究所、2006)、それを読んでいただくのが一番早いだろう。

要は、秋田・中央市場の金沢さん、千葉さんの企業革命は、なんと小林茂のY理論の上に立っているのであり、だからこそ、人は入社後三日コースを3回、三ヶ月に一回ずつ計九日間受けて、MG・マイツール・そして商売の基本原点(GAAPならぬGARP、generally accepted retailing principles)を身につけると、あとはオンザ・ジョブ訓練で、半年・一年・二年であのようにいきいきと高度な意思決定がスピーディーに出来るようになるのである。

もちろんその場合の上司・店長のマネジメントのあり方もY理論でなければならない。横手店ではまさにそれがうまく行っている。その状況を我々は見せてもらったわけだ。

なお、MG・MT・STRACなどはPMCの「P」(業績、経理・計数・コンピューター)とか「M」(やる気・人事・組織・Y理論)であり、千葉さんが今回言われた「GARP」は、これはPMCの「C」(クリエーション、創造・企画・戦略・営業・技術=固有技術)軸のことである。

ということで、秋田・中央市場社は、ソニー・ホンダ・ドラッカーの本道を進んでいるのであり、決して手練手管の小手先で、思い付きを次々に実行しているわけではない。

もし、第二の中央市場を目指したいのであれば、根本的にMG・MT・STRAC・マトリックスはもちろん、孫子・吉田松陰・福沢諭吉・井深・本田の思想、ウォルマートの思想・ノウハウを深く徹底的に研究しなければならないだろう。

(KK西研究所・所長 西 順一郎)