えっ、記号?

それは八月初旬、西研・東京MG会場でのことだった。

MGでは、毎食時に必ず各人が短いスピーチをすることになっている。初日の昼は、有名な「どこの誰、なぜ来たか?」。これを聞くことで、皆さんは、自分以外のほかの人たちが、どんな強いきっかけで、場合によっては自費で、しかも何年も続けて参加してきていることを知る。言われずして悟るのである。

またインストラクターは研修の戦略的方向を決める。つまり相手のニーズに合わせ、喜ばれ、ためになり、かつ効果のある研修に持っていく決心をする。場合によっては、来場者中の要注意人物をマークすることも出来る。

二日目の昼食時は「私とコンピューター」だ。なぜこのテーマがいいかというと、一日目の「どこのだれ、なぜ来たか?」では通り一遍のことしか分からないが、このテーマを語る中で、期せずしてその人の置かれた職場のレベルやその人の思想性などがありありと表出してくるからである。それが分かれば、最終のまとめの講義のテーマが決定できる。

さて、問題の8/6~7のMG二日目のスピーチのときである。数人で参加していた某社の若手社員の一人が、「わが社ではマイツールが業務の標準になっているので、好むと好まざるとにかかわらず、触るのが当たり前になっているが、あの記号がなかなか覚えられなくて、、」と言った。一人ではなく、二人ぐらい同様なことを言った。これを聞いたとたん、30人の受講者中、10人ぐらいいたマイツールの古参ユーザーたちは、白けてしまった。

マイツールのコマンドのことを「記号」「符号」というのは、レベルが低いにもほどがある。マイツールは表計算ソフトではないのだから、記号・符号は存在しない。あるのは「コマンド」(命令、指令)という言語のみである。

表計算はFCに似ている

盆あけの8/20~21の土日、西研マイツール経営教室をやったが、最近は表計算(悪貨)が普及してしまっているので、それを取り除いて、代わりに良貨を突っ込むのは、非常に苦労する。むしろ相手が何も知らなければ楽なのに、いったん間違ったものを覚えてしまっているので、それをひっくり返すのが大変だ。FC(全部原価)を覚えた人にDC(直接原価)を注入しようとするのと同じ苦労だ。

そこで、われわれが「経営教室」で強調するのは、

① 表計算は最初からアウトプットを設計するが、MTは最初は「データ」を作る。それを人間が「加工」して各種の「アウトプット」をつくる。このような「入力、加工、出力」の三段構えになっているところが、普通のコンピューター・プログラミングと同型であること。(特にTM)

② コマンド主義・ページ主義・一行一データ(一行一行が昔のカード一枚一枚に相当すること)。

③ 誰がどんな思いで、何のために作ったか、マイツール創出の歴史(天の岩戸)。思想。

の三点である。

上記のヤング社員は、②の「コマンド主義」が分かっていない。

いつぞや、長谷川郁祐氏が、マイツールのことを「ワープロ感覚のデータベース言語」と言ったが、まさにデータベースでありながら、「言語」であるからこそ、F・E・W・R・Pなどは、原則として「英語で」言わなければならない。それをA・B・C・・・のような符号だと思っているから、いつまでたっても覚えられないし、一生かかっても一流の使い手にはなれないわけだ。

社長が砦

東京のモデルルーム業者KK翔洋の竹原謙社長は、今でも、新入社員が入ると、社長自らマイツールを訓練されるそうだ。同社では、積算から何から全部MTで動き、スピード見積もりによってハイP受注、高収益を実現している。だから、MTを知らない社員は考えられない。同様にPとかQとかMQを知らない社員もありえない。

悪貨と良貨の戦いは、放っておけば必ず人は易き(多数派)につく。FCの場合とおんなじだ。社内をマイツールにするのもDCにするのも、社長その人の強烈な問題意識・危機意識・思想性・志しかないと思う。

昔は全員マイツールだった会社も、今や社長以外全員ただの表使いという企業が大多数。MG・MT・OA大会に対する社長の理解と執念が待たれる。

(KK西研究所・所長 西 順一郎)